香川における中小企業の労働事情

調 査 実 施 要 領

 

1.調査の目的

 香川県内における中小企業の労働事情を的確に把握し、適正な中小企業労働対策の樹立並びに中央会労働指導方針の策定に資することを目的として、毎年定期的に実施しているものである。

 

 

2.調査機関

 香川県中小企業団体中央会

 

 

3.調査実施方法

 会員組合への依頼による郵送調査

 

 

4.調査時点

 平成20年7月1日

 

 

5.調査対象事業所

 600事業所(製造業・非製造業)

 

 

6.調査対象の選定

 県内の従業員規模300人以下の中小企業を任意抽出し一定業種に偏しないよう選定した。

 

 

7.調査の主な内容

 (1)経営に関する事項

 (2)労働時間に関する事項

 (3)従業員の過不足状況に関する事項

 (4)技術・技能・知識・経験の承継に関する事項

 (5)パートタイム労働者の賃金・労働時間に関する事項

 (6)賃金に関する事項

 (7)新規学卒者の採用に関する事項

 (8)その他労働に関する時々の重要事項    

                                                                    

                              

 

 

                    

回 答 事 業 所 の 概 要

 

1.回答事業所数と内容  有効回答数  322事業所

 

平成20年度調査の回答事業所は、調査対象600事業所のうち、製造業171事業所、非製造業151事業所の合計322事業所で、回答率は53.7%であった。(昨年度51.5%)

 

 

 

 

  事業所数 従業員規模 常用労働者数(人) 平均労働者数(人)
1〜9人 10〜29人 30〜99人 100〜300人
香川県 計 322 107 129 71 15 8,929 28
製造業 計 171 58 67 38 8 4,622 27
非製造業 計 151 49 62 33 7 4,307 29

 

 

2.労働組合の有無

 

 労働組合のある事業所は、21事業所であり、組織率は全産業の6.5%であった。(昨年度20事業所、組織率6.5%)

  労働組合の組織率を規模別にみると、「100〜300人」が33.3%と最も高く、次いで「30〜99人」が12.7%となっており、小規模事業所ほど組織率は低く、「1〜9人」の事業所にいたっては1.9%であった。 このことから、従業員規模が大きいほど労働組合の組織率が高い傾向にあるといえる。

 

  事業所数 労働組合の有無 組織率(%)
あ る な い
全 国       18,707 1,381 17,326 7.4%
香 川        322 21 301 6.5%
規模別 1〜9人       107 2 105 1.9%
10〜29人     129 5 124 3.9%
30〜99人     71 9 62 12.7%
100〜300人   15 5 10 33.3%

 

3.常用労働者数

 

 

香川県の回答事業所における常用労働者数は8,929人で、男性6,408人(71.8%)、女性2,521人(28.2%)の構成となっており、女性の構成比が全国平均(29.6%)より1.4ポイント低い。

業種別にみると、男性常用労働者比率は、製造業では「金属・同製品」(91.2%)、「機械器具」(90.9%)「化学工業」(83.3%)、非製造業では「運輸業」(89.7%)、「建設業」(85.2%)の順で高い。

一方、女性労働者比率が高いのは、製造業では「繊維工業」(56.9%)、「食料品」(48.7%)、非製造業では「サービス業」(45.2%)であり、製造業に従事する女性の割合は非製造業に比べて7.0ポイント高い。

 

 

4.常用労働者の年齢別構成

 

 年齢別構成比は、香川県で最も層が厚いのは「35〜44歳」(21.5%)で、次いで「25〜34歳」(20.4%)、「45〜54歳」(19.4%)となっている。

 

5.女性常用労働者比率

 

 女性常用労働者比率をみると、「10〜20%未満」が最も多く25.2%、次いで「20〜30%未満」(19.3%)、「30〜50%未満」(14.6%)と続く。女性比率が50%未満の事業所は全体の77.3%であり、昨年度の75.4%より1.9ポイント増加している。 

また、1事業所あたりの比率は、28.2%であった(全国平均29.6%)。

業種別にみると、製造業31.6%に対して、非製造業24.6%と、製造業が7.0ポイント高い結果となった。

 

6.パートタイム労働者比率

 

 パートタイム労働者比率をみると、「0%」が56.2%と最も高く、次いで「10〜20%未満」(11.5%)、「10%未満」(11.2%)と続き、比率20%未満は全体の78.9%を占める結果となった。

 規模別にみると、「100〜300人」の事業所でパートタイム労働者の採用が63.2%、逆に「1〜9人」の事業所でパートタイム労働者を採用しているのは36.4%となっており、規模が大きい事業所ほどパートタイム労働者を採用している傾向がある。

 1事業所あたりの比率を業種別にみると、製造業が10.3%、非製造業12.8%で非製造業が2.5ポイント高い。

 

 

 

                  (%)
  1事業所あたりの比率 0% 10%未満 10〜20%  未満 20〜30%  未満 30〜50%  未満 50〜70%  未満 70%以上
 全 国       12.8 49.1 17.4 11.2 7.7 7.3 4.8 2.4
 香 川 計       11.5 56.2 11.2 11.5 9.0 7.5 3.4 1.2
規模別 1〜9人       12.4 63.6 - 10.1 13.1 5.1 6.1 2.0
10〜29人     8.8 60.2 13.5 8.3 6.8 9.0 2.3 -
30〜99人     12.3 43.7 19.7 15.5 8.5 8.5 2.8 1.4
100〜300人   12.3 36.8 21.1 26.3 5.3 5.3 - 5.3
 製造業 計 10.3 54.4 10.5 10.5 9.9 9.9 3.5 1.2
 非製造業 計 12.8 58.3 11.9 12.6 7.9 4.6 3.3 1.3

 

 

調 査 結 果 の 概 要

 

1.経営状況について

 

(1)経営状況

 

 

 県内中小企業の現在の経営状況は、「悪い」が51.7%を占め、以下「変わらない」(43.3%)、「良い」(5.0%)の順となっている。「良い」は前年より4.7ポイント低い結果となった。

また、「悪い」は前年より5.6ポイント増加しており、全体的に経営状況の悪化がうかがえる。

 

 

 

 

(2)主要事業の今後の方針

 

 現在行っている主要事業の今後の方針については、「現状維持」とする事業所が73.8%と最も多い。「強化拡大」は前年に比べ7.1ポイント減少の15.5%となり、事業の強化拡大に慎重な姿勢の企業が多いと言える。

 

 

 

 

(3)経営上のあい路

 

中小企業が直面している経営上のあい路については、前年と同様、上位3位は「原材料・仕入品の高騰」(57.2%)、「販売不振・受注の減少」(54.4%)、「同業他社との競争激化」(29.6%)で占められている。

原油価格の高騰や中国の経済成長等の外的要因により「原材料・仕入品の高騰」をあい路に挙げる事業所は、前年に比べ21.4ポイントの大幅な増加となっている。


 

 

 

(4)自社の経営上の強み

 

自社の経営上の強みの今年の上位3位は、「顧客への納品・サービスの速さ」(31.3%)、次いで「商品・サービスの質の高さ」(26.3%)、「製品の品質・精度の高さ」(25.6%)で占められている。

前年と比較すると、「顧客への納品・サービスの速さ」、「商品・サービスの質の高さ」は増加傾向にある。


 

 

 

(1)週所定労働時間

 

 週所定労働時間については、労働基準法で規定されている「週40時間」以下を達成した事業所は87.7%で、前年と比べて3.8ポイント増加している。

 「週40時間」を超える事業所は、業種別にみると、非製造業の未達成の割合が高く、また、規模別にみると、「1〜9人」の事業所で割合が高い。特例措置対象事業場を除く事業所においては、早急に対処することが必要である。


 

 

 


 

(2) 月平均残業時間

 

月平均残業時間は、前年と比較すると「0時間」の残業なしの事業者が31.3%と最も多い。次いで「1〜10時間未満」が27.2%、「10〜20時間未満」が18.5%と続く。

昨年度との比較では、「10〜20時間未満」のみ7.1ポイントの大幅な減少となっている。

従業員1人当たりの月平均残業時間は、1事業所当たり10.95時間(前年10.6時間)である。

 

 

 

(3)年次有給休暇の平均付与日数、平均取得日数

@平均付与日数


  年次有給休暇の平均付与日数は「15〜20日未満」(43.7%)が最も多く、次いで「10〜15日未満」(24.4%)、「20〜25日未満」(19.3%)と続く。

年次有給休暇を10日以上付与している事業所は88.5%となっている。


 

A平均取得日数

 
 
年次有給休暇の平均取得日数は「5〜10日未満」(37.0%)が最も多く、次いで「5日未満」(34.1%)、「10〜15日未満」(17.8%)と続く。

平均取得日数が10日未満の事業所は71.1%となっている。

 

 

(4)年次有給休暇取得率
 

 年次有給休暇取得率(有給休暇付与日数の内、有給休暇を取得した割合)は「70〜100%」(28.9%)が最も多く、次いで「30〜50%未満」(20.4%)であった。

「50%未満」である事業所が半数以上(53.3%)あった。

 

 


 

3.退職金(年金)制度

(1 退職金制度の有無

退職金制度の有無をみると、「退職一時金制度のみ」が43.7%と最も多く、次いで「退職一時金制度と退職年金制度を併用している」が20.9%となっている。「退職金制度はない」は19.0%であった。        規模別にみると、「退職金制度はない」と回答したのは、「100〜300人以上」では6.7%であったのに対し、「1〜9人」では30.8%と24.1ポイントの差がみられた。

 

 

(2)退職金の支払準備形態

  退職金の支払準備形態は、「中小企業退職金共済制度(建退共等を含む)」(59.6%)が最も多く、次いで「社内準備(退職給与引当)」(26.7%)、「厚生年金基金制度」(21.2%)、「特定退職金共済制度」(11.8%)の順となっている。

 

(3)適格年金制度の移行先

 

適格年金制度の移行先として、「未定」(37.5%)が最も多かった。次いで「中小企業退職金共済制度(建退共等を含む)」(33.3%)、「解約・企業年金制度の廃止」(12.5%)の順となっている。

 

4.従業員の募集・採用・定着

 

(1)新卒者の定期採用

 

 新卒者の定期採用状況は、「毎年、新卒者を採用している」と答えた事業所は8.2%、「数年おきに、新卒者を採用している」は10.4%に止まり、81.4%が「新卒者の定期採用はしていない」との回答であった。

 

(2)中途採用の有無

 

 中途採用の有無をみると、「行った」が76.7%であるのに対し、「行わなかった」は23.3%となっている。 

 

 

(3)採用状況

 採用状況についてみると、新卒では「採用活動を行っていない」が68.8%と圧倒的に多く、次いで「十分ではないが採用できている」が13.5%であった。中途では、「十分ではないが採用できている」が37.7%、「十分採用できている」が23.8%、「採用活動を行っていない」が23.5%と続いている。

(4)効果のあった募集方法

 効果のあった募集方法については、「ハローワーク」が新卒(57.5%)、中途(79.7%)とも最も多かった。新卒についてみると、「学校への求人」が52.0%、「合同会社説明会」が18.9%と続いている。一方、中途では、「親族・知人の紹介」が40.6%、「求人情報誌」が13.3%の順であった。

(5)同業他社と比べての若手従業員の定着率

 同業他社と比べての若手従業員の定着率についてみると、「同じぐらいである」が43.5%と最も多く、次いで「良い方である」が39.5%であった。

(6)若手従業員定着のために行っていること

 若手従業員定着のために行っていることをみると、「仕事のやりがいを教えている」が41.0%と最も多く、次いで「休暇を取りやすくしている」(35.7%)、「残業を少なくしている」(26.9%)と続いている。

5.高年齢者の雇用

 (1) 定年年齢

 定年年齢については、「60歳」(58.3%)が半数を超え、次いで「65歳以上」(20.2%)、「定年は定めていない」(16.5%)と続いた。定年年齢を「61歳〜64歳」にしている企業の割合は低かった。


(2)継続雇用制度の有無

 継続雇用制度については、「再雇用制度のみを導入」が41.2%と最も多く、次いで「導入していない」が26.4%、「勤務延長・再雇用制度両方を導入」が18.0%であった。

 

(3)制度の対象者とする高年齢者の基準
 

 継続雇用制度の対象とする高年齢者の基準は、「希望者全員を対象とし基準を設けていない」が56.9%、「就業規則により制度の対象となる者の基準を設けている」が32.2%、「労使協定により制度の対象となる者の基準を設けている」が10.9%となっている。

 

(4)高年齢者雇用の課題

 

 高年齢者雇用の課題は、「賃金体系や水準の見直し」が半数以上の52.4%、次いで「心身の健康面の配慮」(39.6%)、「業務や作業内容の見直し」(30.2%)、「勤務体系や勤務時間の見直し」(25.3%)の順となっている。

 

(5)高年齢者への期待

 

 高年齢者への期待は、「技術・技能の承継をすること」(54.8%)が最も多く、次いで「技術・技能を活かすこと」(42.5%)、「経験・人脈を活かすこと」(38.8%)となっている。

 

 

6.最低賃金引上げの影響

 

(1)最低賃金引上げの影響

 

 最低賃金が引上げられた場合の経営上のマイナス影響についてみると、「ほとんどない」が52.8%、「全くない」が20.4%と「影響がない」とする回答は、この2つで73.2%を占めているのに対し、「多少ある」が10.7%、「大いにある」が5.7%を示しており、「影響がある」とする回答は、この2つで16.4%を占めている。

 

 

(2)最低賃金引上げの影響がある場合の対応
  最低賃金引上げによるマイナス影響の対応として、「生産性向上の努力をした」(32.0%)に続き、「特に何もしていない」(28.0%)、「新規雇用を控えた」(22.0%)、「労働時間を短くした」(16.0%)が多くなっている。

 

 

7.新規学卒者の雇用状況

 

(1) 新規学卒者の採用計画

 

 平成21年3月の新規学卒者の採用計画について、「ある」と回答した事業所は16.7%で、2年連続して減少している。採用計画が「ない」と回答した事業所は70.7%と前年より4.5ポイント増加している。

 規模別に見ると、「1〜9人」(4.0%)と「100〜300人」(60.0%)では56.0ポイントの開きがあり、従業員規模が大きくなるほど、新規採用計画のある割合が高く、新規学卒者の採用に意欲的であることがうかがえる。

 

 

 

 

(2)新規学卒者の初任給

 

 平成 20年3月卒業の新規学卒者に対して、平成20年6月に支給した1人当たりの平均所定賃金(税込額)の調査結果は次のとおりである。

 

        単位:円   ※( )内の数字は、対前年比  
      初任給 香川 全国
高校卒 技術系 製造業   165,225              
( ▲1,533 )   163,708     155,283  
非製造業   161,280   ( ▲959 ) (  ▲122   )
( ▲1,295 )            
事務系 製造業   140,625              
( ▲29,626 )   145,417     152,014  
非製造業   155,000   (  ▲16,361 ) (   812 )
(       0 )            
専門学校卒 技術系 製造業   172,400              
( 3,080 )   173,962     167,550  
非製造業   174,938   ( 1,625 ) ( ▲326 )
( 338 )            
事務系 製造業   157,875              
(  ▲15,250 )   161,917     164,951  
非製造業   170,000   ( ▲4,233 ) (   ▲301 )
( ▲8,500 )            
短大卒  (含高専) 技術系 製造業   -              
( - )   -     170,178  
非製造業   -   ( - ) ( ▲328 )
( - )            
事務系 製造業   -              
( - )   171,000     165,898  
非製造業   171,000   (   10,750 ) (   402 )
(   10,750 )            
大学卒 技術系 製造業   191,667              
( 7,530 )   196,391     191,386  
非製造業   199,226   (   7,505 ) ( ▲399 )
( ▲741 )            
事務系 製造業   187,000              
( 4,874 )   187,847     188,764  
非製造業   188,452   ( 5,380 ) (    2,065 )
( 5,707 )            

  

( 初任給に関する注意)

 

 ● 単純平均:各事業所ごとの1人当たり平均初任給額を足しあげ、事業所数で除した数。

 

   ● 加重平均:各事業所の1人当たり平均初任給額に採用した人数を乗じて得た数の総和を採用した人数の総和で除した数。

 

   

 

8.賃金改定

 

(1)賃金改定実施状況

 

 平成20年1月1日から7月1日までの間の賃金改定について、「引き上げた」、「7月以降引き上げる予定」は、合わせて37.9%であり、前年(42.9%)より5.0ポイント低下した。逆に、「引き下げた」、「7月以降引き下げる予定」は合わせて3.1%であり、前年(1.7%)より1.4ポイント上昇した。

 規模別にみると、「100〜300人」の事業所で60.0%が「引き上げた」と回答したのに対し、「1〜9人」では18.1%で、その差41.9ポイントであり、規模による格差が見受けられる結果となった。

 

 

 

 

(2)平均昇給額・昇給率

 

 平成20年1月から7月までの間に、常用労働者に定期昇給・ベースアップを実施した76事業所の昇給額を見ると、単純平均・平均昇給額が6,023円(対前年比マイナス1,789円)、平均昇給率は2.53%(対前年比マイナス0.71ポイント)となっている。